昨今の不良債権処理
2010年2月10日 by Quality-F
100年に一度の金融危機と叫ばれた、2008年以降、かなりの不良債権処理(不動産売却等)が表面化してくるだろうと筆者自身も考えていた。しかし、現実には小規模の案件のみで、市場に溢れ出すどころか、需要過多になっている。2008年秋からの静かなファイヤーセールブームも一年以上も前に終了してしまった。今回は不良債権処理について、2003年当時と比べてお話しよう。
不良債権がこのように大幅に増えた状況の中で、大規模に表に出てこないのは、金融マニュアルの変更が大きな理由である。2003年当時は、銀行の格付けで破たん懸念先、実質破たん先については、引当金を70~100%つまなければならなかった。当該引当金部分は課税対象となっており、そのため、30~0%でサービサーに売却して損失を出せば、損益として、課税の対象となり、納税額を減少することができた。また、税金は前払いなのでサービサーに売却することで税金の還付も受けられた。それをベースに国からの公的資金を返済したのである。
しかし、現在は、実質的、抜本的な事業計画が出ていれば要管理先として名目上あつかわれ、当然に、引当金を積む必要がないのである。つまり、損失を出してまで売却する必要がないわけだ。そのため、昨今のサービサーは悲惨な状況である。致し方なく売却するのは、実質的、抜本的な事業計画も出せないような、どうしようもない会社のみで、そんなところは、結局、破綻か民事再生になってしまうからである。つまりは、国の政策により、不良債権処理も大きく影響を受けたわけである。2003年当時は数百件のバルク案件が連日のように溢れ出し、DD等も追いつかない状況であった。不動産証券化バブルの崩壊後の昨今の不良債権案件が、当時と比べて圧倒的に規模が縮小しているのは、このような理由からである。