伊勢丹吉祥寺店閉店、不動産投資の優良物件です。

伊勢丹吉祥寺店閉店

2009年5月13日 by Quality-F

吉祥寺は、東京都内でも住みたい街でトップクラスに位置する街である。

そのため、都心から距離が離れているものの、マンション分譲価格や住宅地価格が非常に高い水準にある。

駅周辺には商店街や百貨店等の商業施設が集積し、背後には住環境良好な緑溢れる閑静な住宅地が広がる。さらに都心部へのアクセスが良好である。これらが、人気の理由だろう。伊勢丹吉祥寺店は1971年開業。建物延べ床面積45,000㎡の大部分を賃貸している。売り場面積は約21,000㎡ 直近の2009年3月期の売上高は174億3,200万円(前年比93.5%) である。ピークには売上高221億円(1997年3月) であった。

昨今、都内百貨店の売上げは低迷している。それでも都心部(新宿・池袋・銀座・渋谷等)の百貨店は月坪効率400千円/月坪~500千円/月坪程度を売上げている。伊勢丹新宿本店については1,000千円/月坪以上売上げている(月坪効率は売場面積1坪あたりの月商である)。

このような状況下で吉祥寺は、直近1年は228千円/月坪の低水準にあった。ピーク時では289千円/月坪であったことからも落ち込みは激しい。

月坪効率の水準としては、地方都市に位置する百貨店の水準である。また郊外型のイオンやイトーヨカドーなどのショッピングセンターより若干良い水準である(ショピングセンターは面積が広いため、一概に比較はできないが・・・)さらに 伊勢丹立川店で直近267千円/月坪程度であることから 吉祥寺のエリア性からもともと都心部へ吸引されている状況が伺える。そのため都心部との競争が熾烈になり、利益を生み出すことができず、閉店ということになったのであろう。

商業施設の賃料査定にあたって重要なのは売上げである。売上げが高ければ不動産として賃貸する際には、高い賃料を支払うことができる。そのため、商業施設では賃料の支払い方も ①固定賃料、②売上げの10%というような変動賃料 さらに ③固定賃料と変動賃料が合わさった形態(例えば 売上げ●●までは賃料いくら、●●を越えた場合には超えた部分の○%というような形式)がある。

どのような形態かは不明であるが吉祥寺店は年間11億円の賃料(共益費や他の不動産経費の負担等は不明)を支払っているとのこと(新聞報道)。

百貨店は1棟貸しがほとんどであることから 仮に延べ床面積45,000㎡を賃貸していたとすると、@6,700円/坪が賃料単価である。相場としては 都心部で@10,000円/坪(共益費込み)を越えてくることがほとんどであり 地方の百貨店の賃料水準である。

また 年間の賃料負担率は6.3%程度である(賃料負担率は 売上げによって大きく変動するものの企業体が賃料として支払う余力があるかどうかを見るには重要である)。負担率としては高くないものの、伊勢丹の決算資料から、来期の売上げ予想は158億(月坪200千円/坪程度、負担率7%程度)と厳しい見込みとなっている。

つまり、景気悪化に伴う消費低迷リスク 吉祥寺というロケーションから都心部に吸収されてしまうリスク、都心部への経営集中・効率化などを考慮しての撤退だと思われる。

2006年に三越が吉祥寺から撤退(現在、ヨドバシカメラ)、今度は伊勢丹。ほかの百貨店の動向によっては、吉祥寺の住宅地としての地位が揺らぐことになりかねない。