不動産投資トピックス 商業施設と不動産投資(5)
2010年7月29日 by Quality-F
以上、前段として商業施設の賃料の様々の見方をお話した。
そのクライアントの要望は「バリューをあげたい」この一言に尽きる。バリューをあげるためには、キャップを調整するかキャッシュを調整するかの2点しかない。
キャップは原則的にはキャッシュのボラティリティであることから、そのキャッシュが安定的であれば当然として、理論的には低下する。しかしながら、キャッシュ(賃料等)については、そうカンタンに納得させることは難しいであろう。なぜなら、GMS等の商業施設では賃料は長期固定であるからだ。簡単にマーケットや標準化賃料に置き換えが利かないのである。
それに、これまでに数回にわたり話したように、賃料自体の個別性が非常に強く、その適正水準の把握が非常に困難なのである。かりに、かなりの賃料の割安感が現実にあったとしても、その割安感に関しては、賃料の安定性、つまり、キャップに反映すべきもので、実際の賃料を変更、つまりは値上げを織り込むのは、かなり乱暴な想定である。今後(将来)の賃料に関するエビデンス(予定賃料等)があるならまだしも・・・
筆者が開発型の大手家電量販店の鑑定評価を行った時は、マーケットよりやや高めの賃料水準であったため、雁字搦めの予定賃料の覚書を締結させた上で、当該賃料を検証の上、用いた経験もあるが。
いずれにせよ、新たな箱にぶち込む際には、昔ながらのお堅い鑑定評価も取らないといけない。そんな状況を踏まえると、賃料の値上げ前提で、かつ、キャップを強く見るのは、今のこの市況ではナンセンスと思われる。(次回は 不動産投資トピックス…商業施設と不動産投資(6))