今、買っている不動産投資家 – その理由と主体1
2009年9月30日 by Quality-F
先日、市ヶ谷のオフィスビルを購入した中央大学やインテージ秋葉原ビルを所得した京阪電鉄等、昨今のマーケットを見ていると不動産ファンドバブルの頃とは明らかに様相が変化してきたのは明確である。本日は現在の不動産マーケットの主体について話したい。
外資系を中心とした不動産ファンドが、グローバルな投資資金を中心に日本の不動産マーケットに証券化旋風を起こした。その結果、短期間に不動産価格をそのポテンシャル以上に吊り上げた結果となった。その後、世界的な信用収縮によりマーケットの牽引役が市場から退場して以来、反動でポテンシャル以上に不動産価格の下落が生じている。そして、現在の不動産マーケットの低迷はご覧の通りである。証券化の規模も全盛期の約7割減となり、バイヤーの顔や投資スタンスも大きくシフトしている。下記主体の働きで若干上向きの兆しが見られるとはいえ、依然として脱却の見込みは無い。
エクイティやレンダーのヒアリングや、昨今の市況(事例)をリアルタイムで見ていると、現在、旺盛な需要が見られる投資家は下記の6主体と推察される。いずれも、ファンドバブルの時には高値で手の出なかった投資家である。今を絶好の買い時と考えて購入している点は共通している。
(1)個人富裕層
(2)大手不動産会社
(3)鉄道会社
(4)一般事業法人
(5)生命保険会社
(6)学校法人
この中で本日は個人富裕層についてお話しよう。
現在、オーナー企業の経営者や地主等の資産家が不動産購入に積極的である。その取得目的としては相続対策や事業継承、節税、資産運用等である。したがって、その側面に優位性が認められる物件のニーズは旺盛である。
相続対策の場合には、物件の換金性が重視される。よって住宅地として、ブランド力のあるエリアが指向される。都心5区や品川区・目黒区・文京区などが代表される。その上、ランドバリューと路線価の乖離が大きい土地ほど相続税評価額と換金時のランドバリューが異なる事から有効である。節税については過去の記事を参照頂きたい。
資産運用については、不動産の投資環境が従来よりも数段に整ってきており、リスクが明確になってきた点が大きい。資産運用においては、やはり、利回りが重要視されるが、投資ファンドのような明確なクライテリアが無く、自身が納得した物件と価格であれば購入に踏切る投資家が多い。一般的にはNOI8%前後を目安にしているようである。
投資スタンスとしては原則として長期保有前提である。よほどのいい話で無い限り売却はしない。このようにすればIRRはかなりの高水準が維持される事となる。また、不動産(担保)である事から、突発的な資金需要(事業資金等)が起きても、資金調達が容易に行なえる。このような投資スタンスは、不動産ならではで、かつ、日々のCFが十分に確保されている富裕層の特権ではあるが。次回は大手不動産業者についてお話しようと思う。