個人向け不動産投資における大規模修繕積立金について
2009年8月30日 by Quality-F
先日、Capexの一般論を簡単に説明したが、本日は個人投資家向けのCapexについて投資の観点から具体的に注意点を話そうと思う。
次のケースを想像して欲しい。読者ならどちらをセレクトするだろうか?
A 4,000万円 利回り 12.0% 2DK(40㎡)×6世帯 木造築25年 賃料:6.7万/戸
B 5,500万円 利回り 7.5% 1LDK(40㎡)×4世帯 木造築2年 賃料:8.6万/戸
駅距離や周辺環境等のロケーションは同程度。利回り12.0%に引かれる読者も多いことであろう。しかし、良く考えてみるべきである。Aの物件はそもそも、この先の返済期間の間、競争力を保ち続ける事ができるのだろうか?
木造も築20年を超えてくると、大規模の修繕が必要となる。それは、内外共にである。40㎡程度の住戸であれば、設備等を含めたフルリニューアルで350万円前後の費用がかかる。外装をあわせたら、相当の費用となるであろう。仮に、一部屋350万円(×6世帯)のリニューアルを行った場合の状況を物件Cとすると、概ねこのような状況となったとしよう。
C 6,100万円(4,000万円 + 2,100万円) 家賃:6.7万円(リニューアル前) →7.5万円(リニューアル後)
しかし、その利回りを計算すると・・・ 12.0% → 7.4%
と一気に利回りが低下する。この、水準であれば、Bの築浅物件を購入すべきであったことは明らかであろう。つまり、今後、物件に対して必要となる投資額(Capex)等を明確に把握していないと、本当の利回りは見えてこない。木造で20年を超えてくると、どのような状況になっているかは、容易に想像がつくであろう。目視できる部分はいいものの、見えない部分についてはどうしようもない。特に満室であれば、住戸内の内覧は出来ない場合がほとんどである。
外観のみ簡易にリフォームして売却しようと目論んでいる物件が多いことは、物件を探している読者なら理解できるはずである。「おっ、この物件、築古だけどきれいじゃない。きちんとリニューアルしてあるし。利回りも高いしね」なんて、思って物件を眺めている方も多いのではないか?そもそも、売却を前提にリニューアルしているケースがほとんど。また、外観がきれいであれば、構造もきちんとしている筈だろうとの、根拠の無い思い込みを誘発させることができるのだ。当然としてリニューアル費用は売値に入っているし、しかも、その投資額以上に高く売れる。
もう、読者も理解できたのではないだろうか。築古物件は非常にリスクがある物件である事を。だから、当然に利回りが高いのである。しかし、そんな築古物件でも、適切な維持管理を行っている物件や、きちんと施工されている物件等、状態がすばらしい物件もある。また、月並みな物件であっても、取得価格次第で、今後必要となろう投資額を投入しても余りある利回りを持つ物件も当然にある。いずれにせよ、適切な収支計算を行って、本当の利回りを明確にし、自己の要求利回りとその物件のリスクを天秤にかけて投資は行うべきである。
現在、溢れるほどの物件がNET等を介して広告されているが、その中で優良物件を見つけるのは素人には難しい事ではある。しかし、最低限の正確な知識を身に付ければ、困難な事ではない。むしろ、誰でもできない所に不動産投資としてのウマミが存在するからである。