ダヴィンチの行方
2009年9月14日 by Quality-F
9月11日、ダヴィンチホールディングスが、パシフィックセンチュリープレイス丸の内を担保とするローンがデフォルトする見込みになったと公表した。ダヴィンチは軍艦ビルやパシフィックセンチュリープレイスなど大型物件のリファイナンスが続いたが、ここにきて頓挫する見込みとなった。自らのエクイティ投資分137億円が損失となったが、この損失が企業業績に与えるインパクトは、2008年12月の連結ベースの売上527億円から推測するに大きい。
パシフィックセンチュリープレイスは、JR東京駅に隣接するオフィス・ホテル・店舗の複合ビル。地上32階地下4階建て、延べ床面積約80,000㎡の規模で、2001年に竣工した。ダヴィンチは2006年9月、当ビルのオフィス部分24フロア(専有床面積は39,102㎡) の信託受益権を、約2,000億円で香港のパシフィックセンチュリーグループから取得した。
入札前には、「1,000億円程度ではないか?」や「1,400億円でないとパシフィックセンチュリーグループが売却しない」など思惑が飛び交ったものであった。2,000億円は当時から高過ぎる水準であった。なぜなら、当ビルのテナントの賃料水準は、30,000円/坪後半~50,000円/坪、平均40,000円/坪前半程度(共益費込み)であった。当時の賃料から価格を算出すると概ねCAP2%前半の水準であった。ダヴィンチは当然 そんな買い方をするわけが無く、賃料が60,000~70,000円/坪まで上昇させるものと想定し、CAP3.5%前後で購入しているものと推察される。
ここで賃料が60,000~70,000円/坪まで上昇するか否かというのが、ポイントである。丸ノ内や大手町のSクラスビルの入居テナントの平均賃料は過去10年を見ても60,000円/坪になることはなかったし、今後もないであろう。丸ノ内の大型ビルで60,000円/坪や70,000円/坪といわれた時期もあったが、ほんの一瞬であった。多くのテナントは40,000円から50,000円/坪で入居しており、面積や条件、成約時期によっては30,000円/坪台で入居しているテナントもあるわけで、ビル全体で平均してしまうと40,000円中盤/坪程度しかならないのである。賃料だけでみると、ボラティリティーは非常に大きい。
ダヴィンチが当ビルを取得した時期は、非常に過熱している時期であり、各プレイヤーが2,000億円という高買いに付き合うことになった。このような状況で取引され、最終的にデフォルトになった事は当然という見方もできよう。しかしながら、この時期に当時新興不動産ファンドだったダヴィンチが、東京でも屈指の物件を取得する為には致し方なかったことであり、投資の本質とはこういったものなのであろう。また、当該物件を取得した事によるダヴィンチのクレジットの向上は計り知れなかった事も付加えておこう。
今後、売却するにしても、仮に平均賃料を45,000円/坪と想定する(ダヴィンチが取得後、確かに賃料は上昇傾向になり、また、既存テナントの賃上げも行っているので)、現在の状況からCAP4.5%で計算するとやはり価格としては1,000億程度である。あとは投資家の取得意欲+αでどこまで価格が高くなるかであろう。
話をダヴィンチに戻すが、ダヴィンチがノンリコースとは別にBNPバリパからの借り入れた220億がある。このローンは、2010年3月が期限となっている。BNPバリパも今後の見通しや方針について、当然に決定していることだろう。いずれにせよ、まだまだ険しい道のりが続くのは明らかだ。最後の宴も終焉をむかえつつあるのか・・・それとも