利回り
2009年8月11日 by Quality-F
一言で利回りといっても、多数存在する。表面利回り(グロス利回り)とネット利回り。ネット利回りの中でもNOI利回りとNCF利回り。そして、期待利回り、取引利回り等である。
これらは同様に、価格に対しての収益の割合であるが、その収益の見立てにより利回り水準は大きく異なる。表面利回り(グロス利回り)とは、不動産から得られる収益(満室想定の場合が多い)を物件価格で除したものである。不動産投資では表面利回りで10%は欲しいなどとよく言う。表面利回りは不動産経費を考慮していないため、経費がどれくらいかかるかで得られる利回りは大きく異なる。
ネット利回りとは、不動産経費を考慮した利回りで、その経費の範囲により、NOI利回りとNCF利回りがある。NOI利回りとは営業純収益ベースの利回りであり、CAPEX等の将来に備える支出を伴わない費用は考慮していない。現実の収支ベースで把握し易いことから、物件検討の段階や不動産業者等が良く使っている。一方、NCF利回りはCAPEX等の費用も考慮したNCF(ネットキャッシュフロー)ベースの利回りである。物件の査定においては通常NCF利回りが用いられ、デューデリジェンスや鑑定評価で用いられる利回りである。
期待利回りとは文字通り、投資家が期待する利回りであり、これは投資家本人が投資スタンスにより自由に決定しているものだ。2008年夏までの不動産バブルまでは、期待利回り>取引利回りとなっていた。つまり、期待する収益を確保しうる水準の価格帯での購入は出来ない状況であった(物件の価格が期待利回り以上に高い)。
取引利回りとは、実際に取引された価格における利回りで、CFの構造(NOI、NCF)やベースとなる賃料(現行・標準化)によっても大きく異なる。例えば、都内にある数千億円で取引されたSクラスビルにおいて、現行賃料では取引利回り2%を切っている水準であるが、エクイティーは今後賃料が大幅に上昇すると見込みその賃料水準(収益)をベースとして3%中盤での価格で購入している。
投資する物件は、世界に二つと同じものはなく、すべて異なる。これは不動産特有の個性である。したがって、利回り水準も千差万別であり、エクイティーの投資スタンスやレンダーの協調スタンス、獲得IRR水準やプレイヤーの顔等、様々な要因によって影響を受ける。このように、色々な価格形成要因の影響下で、その時期に一定の水準に理論上は収斂していくものとなる。
このように、簡単に利回りと言ってしまっても、その実際の利回りについて深く考察することは非常に重要である。多くの個人向け物件は表面利回りを記載し、その高さをアピールしているが、本当の利回りは別にあることを認識してもらいたい。