トッププレイヤーの行方
2009年11月4日 by Quality-F
数週間前に遡る。ぜひ、書いておきたいと思っていた件がある。法人のDDや鑑定でも大変にお世話になったクライアントが、この経済状況の中で独立したのである。その方は日本でも屈指の新興不動産ファンドの創成期のメンバーで、証券化バブルを起こしたトッププレイヤーの一人だ。
彼は上司と二人で独立して、END向けのAMやPM,仲介等、不動産に関する物なら、なんでも行っていくとの事である。要は、専門性の高い町場の不動産屋さんを目指すとの事であった。そして、ぜひ、色々の形でコラボレーションが計れたらとの事であった。この話を聞いて、専門性の高い不動産のプレイヤーが法人向けから個人向けに着実に方向転換を図っていると痛感した。
不動産業界は従来、法人向けと個人向けに大きな隔たりがあり、営業スタイルも収益スタイルも全然異なっている。特に、法人向けで重視されるのはネットワークである。つまりは人と人の繋がりに尽きる。ブラックな話が良く出る理由はこの点にある。逆に、その繋がりがあれば、安定的な収益が確保できることとなる。逆に個人向けとなると、裾野が広い分、要求されるスキルが全く異なる。その上、法人向けと比べると、収益性が薄く、かつ、手間がかかることとなる。したがって、法人相手で収益を十分に確保しうる会社は、まず、個人向けにはシフトしていかないのである。しかしである。このように大きな経済低迷期の時代には法人需要が皆無となり、そのスタイルギャップから今日のような全滅の様相を呈する事となる。
アメリカでは不動産業界というと、まず、エージェント業務が主である。聞いた事もあると思われるが、バイヤーズエージェントやセラーズエージェント等である。信頼のおける専門家を購入や売却の際のエージェントとして、自身の富を守るわけである。専門家には専門家をと、非常に合理的なアメリカらしいシステムである。筆者も十年ほど前から、不動産業に関して、日本の仲介システムや不動産業界の限界を感じており、必ず適正なエージェント業務に確実に移行していくであろうと。その考えは「スマートプロパティ」を通して今日に続いている。やはり、時流はこのような方向に否応無く動き始めているのであろう。この流れは読者を含め、今後、投資用不動産を購入しようとする個人のみならず、非常に有用なものとなろう。不動産は人々が生活する上で必須なものであるからだ。今後、知識やスキルが欠如した個人(情報の非対称性)から、営利を貪るシステムが通じなくなるのは明白だ。「広告→反響→たたみかけ営業による刈り取り」との従来のスタンスはいずれ崩壊する。今回のトッププレイヤーの個人向け独立の件も、日本の新たな不動産業界へのシフトが確実に近づいている事を示している。